顔をぼかすと誰なのか分かりにくくなりますが、それだけで写真の匿名性を確実に保てるわけではありません。モザイク処理後も識別に役立つ画像情報が残ることがあります。単色の覆いで顔の画素を隠しても、髪、服装、周囲の状況から人物が分かる場合があります。人物の身元を守る必要があるなら、ぼかしのスライダーを強めるより、共有画像からその人を取り除くか、別の写真を選ぶことから始める方が適切です。

考えるべきなのは、単に「顔がまだ見えるか」ではありません。「写真全体、添えた文章、入手できる別の写真から、想定する閲覧者がこの人物を特定できないか」という問いです。このガイドでは、研究が実際に検証した内容と、共有前にできる実用的な確認を分けて説明します。

「隠れている」には三つの意味がある

写真には、ぼかしたポートレートのように顔の細部が減っている状態、書き出した画像の完全に不透明なパッチのように顔の画素が覆われている状態、そして人物が特定されない状態があります。これはそれぞれ別の結果です。最初の二つは編集操作を表します。三つ目は、何が残って見えるか、誰が見るか、その人がほかに何を知っているかによって変わります。

目の上に置いた絵文字は、見た目の演出にはなっても、顔の残りの部分を覆ってはいません。大きな不透明のパッチで頭部全体を覆っても、その下の名札が人物を示しているかもしれません。どちらの例でも、元の顔を復元する必要はありません。編集を「元に戻せる」という主張を読むときは、この違いを意識してください。

ぼかしとモザイクについて研究から分かること

2016年の研究プレプリント『Defeating Image Obfuscation with Deep Learning』で、McPherson、Shokri、Shmatikovはモザイクやぼかしを施した画像を検証しました。細部が減っていても、モデルは人物の識別分類ができました。

識別候補となる人物は学習データに含まれ、モデルは対応する難読化処理をした画像から学習しました。これは、ぼかされた見知らぬ人なら誰でも名前を当てられることや、元の顔の画素を正確に復元できることを示してはいません。この過去の実験は、現在のあらゆるアプリを評価したものでもありません。見た目で判別できないだけでは、識別に役立つ情報が画像に残っていない証拠にはならないと分かります。

この研究は、どんな場合にも安全なぼかし半径やモザイクの大きさを示してはいません。解像度、処理方法、参照資料は異なります。目視でぼかしを強めて判断するだけでは、こうした条件を解決できません。

顔を覆っても人物が分かる場合がある

OhらによるECCV 2016の研究は、PIPAデータセットを使って、交流目的の写真アルバムにおける人物認識を調べました。人物のラベルが付いた参照写真と、同じ人物が繰り返し登場する写真がある条件では、頭部を隠しても、頭部以外の情報や写真同士の関係が認識を助けることがありました。結果は、写真が同じイベントで撮られたものか、異なるイベントのものかによっても変わりました。

これは、単色の覆いの下にある画素が見えるという意味ではありません。頭部を隠すことと、誰なのかを隠すことが別の課題だと示しています。人物のラベルが付いた集合写真と、頭部を隠した写真で、同じ特徴的なジャケットを着ていれば、二つの写真のつながりから人物が分かる可能性があります。

人間も、顔の細部がなくても見慣れた姿を認識することがあります。Prestonらの2022年の予備研究では、黒い四角で顔の特徴の大半を覆い、髪と首だけが見える状態でも、一部の有名人の写真は誰なのか認識されました。最初の調査には大学の学生または職員16人が参加し、画像は有名人としてのなじみ深さを考慮して選ばれていました。この小規模で手順を定めた実験は、一般の見知らぬ人が認識される確率を示すものではなく、絵文字ステッカーも検証していません。一方で、知らない人には分からなくても、「友人なら誰か分かるはず」という判断を重く見る理由にはなります。

何を守る必要があるかに合わせて編集を選ぶ

次の表は目に見える変更を比較したもので、認証された匿名性のレベルではありません。どの方法でも、共有するファイル全体とその文脈の確認が必要です。

方法変わるもの引き続き確認すること
ぼかし・モザイク画像の構造を一部残しながら、細部を減らします。残った顔の情報、露出している特徴、編集範囲外のあらゆる手掛かり。効果が強く見えることを保証と考えないでください。
完全に不透明な覆い適切に書き出した合成画像の、覆った部分の画素を置き換えます。範囲を十分に覆えているか、不透明か、髪や頭の輪郭、服装、映り込みはどうか。送るのが編集可能なプロジェクトではなく、書き出したコピーかも確認します。
その人が写らないようにトリミングする共有用コピーの見える範囲から人物を取り除きます。映り込み、別の角度の画像、キャプション、元画像や追加の写真も添付していないか。
別の画像を選ぶ・共有しないその人物の姿を写した画像の公開を避けます。代わりの画像や添えた文章が、同じ人物を明かしていないか。不確実さが残ることを受け入れられないときは、この方法を選びます。

ステッカーなら自動的に不透明な秘匿処理になるわけではありません。絵柄に透明な部分があるかもしれず、配置によっては識別できる特徴が露出します。同様に、編集プロジェクト内で切り抜くことと、実際に送る予定の書き出し画像を確認することも別です。

実際に共有するコピーを確認する七つの手順

  1. その人を写す必要があるか決める。まず目的と閲覧者を明確にします。公開するイベント報告なら、人物が分かる通行人の写真ではなく、会場の一部を写した写真でも目的を果たせるかもしれません。予定する共有方法について、本人に差し支えがないか尋ねましょう。
  2. 主役だけでなく、写っている全員を確認する。画面の端、背景、鏡、窓、写真内に写り込んだ小さな画像まで見ます。中央の顔だけ隠しても、別の場所で見えている人は守れません。
  3. 覆うか取り除くか、意図を持って選ぶ。人物を残すなら、目だけを覆うのではなく、頭部全体と周辺の細部を確認します。画像を元の大きさで見て境界を調べてください。プレビューが小さく見えることから安全だと判断しないでください。
  4. 画面の残りの部分を読み取る。見える名前、名札、特徴のある持ち物、別の写真とのつながりを探します。NISTの非識別化に関するレビューは、マルチメディアが複数の種類の手掛かりを組み合わせて個人の識別情報を含み得る理由を説明しています。一つの手掛かりを取り除いても、ほかを評価したことにはなりません。
  5. 共有用のコピーを別に書き出す。新しいJPEGやPNGなど、編集内容が見える画素に反映された、レイヤーを統合した静止画像として書き出します。元画像と編集可能なプロジェクトは添付しないでください。形式名だけで機微な情報がすべて消えたと考えないようにしましょう。
  6. 書き出したそのファイルを開き直す。別の画像ビューアーで表示して編集結果を調べ、送信前に実際の添付ファイルを確認します。ファイル名、キャプション、タグ、追加の画像も見直しましょう。目に見えるミスの発見には役立ちますが、匿名性を鑑定する検査ではありません。
  7. 残った手掛かりが目的を損なうなら、共有をやめる。同僚が服装で人物を認識できる場合や、キャプションがその場にいた唯一の人を名指ししている場合は、別の画像を選ぶ、場面をもっと取り除く、投稿しないといった方法に切り替えます。閲覧者を限定すれば露出を減らせますが、受け取った人が人物を認識したり、ファイルを転送したりする可能性は残ります。

EFFの写真共有に関するガイダンスも、本人の許可と、顔以外の識別につながる細部を考えるよう勧めています。このチェックリストは実用的な見直しの手順であり、写真が匿名化されたかどうかを法律上判断するものではありません。

例:通り合わせた人の顔を隠したイベント写真

ワークショップに参加した自分の写真を共有したいとします。一緒に写った人から、誰か分からないようにしてほしいと頼まれたため、その人の顔をぼかしました。しかし名札はまだ読めて、複数画像投稿の次の写真には、編集していないその人の姿が写っています。最初の写真のぼかしを強めても、この二つの情報開示は変わりません。

役に立つ修正は、共有の目的を考えることから始まります。写真の目的を損なわないなら、その人がまったく写らないようにトリミングし、二枚目を削除し、キャプションに名前がないか確認します。映り込みにその人が残っている場合や、イベントの文脈から誰か分かる場合は、別の写真を使いましょう。こうした問題に気付くために、認識サービスを利用する必要はありません。

身元、位置、外見の確認は分けて考える

目に見える身元の手掛かりは、写真共有で考えることの一部にすぎません。顔の編集とは無関係に、ファイルから場所が分かることもあります。その点は、当サイトの位置メタデータと共有のチェックリストで別に確認してください。位置情報を削除しても、それだけで匿名性が確立するわけではありません。

見栄えを良くする編集には、また別の目的があります。美容フィルターと第一印象、およびAIプロフィール写真と誠実な表現のガイドでは、見せ方によってポートレートが伝える内容がどう変わるかを説明しています。生成された顔が本物らしく見えることも、外見の評価が好意的であることも、プライバシーが保たれる証明にはなりません。

FaceScoreは、写真に基づく外見のフィードバックを提供します。利用する場合は、使用する許可のある写真を選び、ほかの人が写らないようにトリミングしてください。フィードバックはその画像についての情報として受け止め、人物を特定できるかどうかの検査とは考えないでください。身元の保護を優先するときは、見栄えについての意見を求める前に、何を共有するかを決めましょう。